麻酔について
麻酔について
(麻酔科より配付された冊子より抜粋 2005/8/29現在)
◆麻酔とは
麻酔とは、痛みに対する感覚を一時的に消失させ、患者様の苦痛を除去すること
です。これを全身的に行う場合を全身麻酔、局所的に行う場合を局所麻酔といい
ます。全身麻酔では、意識の消失を伴います。
通常の全身麻酔は睡眠導入薬の静脈内投与で入眠していただき、筋弛緩薬
で筋肉の動きを抑えて気道の確保のため気管内へチューブを入れます。このチュー
ブを通じて、人工的に患者様の呼吸を維持し、酸素と麻酔ガスを吸入していただ
きます。手術が終わり、麻酔ガスの吸入を止めますと、数分から十数分の内に患
者様は覚醒します。覚醒したら気管内チューブを抜去して、麻酔が終了します。
◆麻酔の危険性
麻酔下で手術をおこなった患者様が、麻酔後も意識を回復しなかった例や、麻酔
中に死亡した例が時に新聞に載せられています。これらの記事を読んで麻酔は怖い
と感じている方が多いかと思われます。
正直なところ、麻酔を受けて絶対安全ということはありません。2001年に日本麻酔
学会が調査を行ったところ、1,284,957麻酔症例のうち、3,158症例が死亡や危篤な
病態を残しました。これらの症例を良く分析すると、麻酔が死亡の原因となったのは
13症例です。つまり麻酔が原因となって死亡するのは10万麻酔症例に1例の割合
となります。
死亡のほかにも、植物状態、全身運動麻痺などは危篤な併発症です。このような
危篤な併発症の原因は主として麻酔中の患者の心停止です。心臓の活動が停止
すると、血液が脳へ運ばれず脳細胞は酸素不足のため壊死に陥ります。我が国ある
いは外国の研究で5,000〜10,000麻酔症例に1例心停止が発生すると報告されて
います。主な原因は麻酔薬の過量と肺喚気の不良です。
@ 麻酔量の過量
吸入麻酔、静脈麻酔、局所麻酔いずれの麻酔方法でも麻酔薬あるいは関連薬を
患者様に投与します。投薬量には基準があり、基準を超えて薬物を投与すれば当然
副作用が現れます。このような事は麻酔科医の許されない単純ミスで、発生の可能性
は低いと思われます。一方基準内の量でも、患者様の反応が強く出現することがありま
す。薬剤に対する反応はお酒の酩酊度同じで大変個人差があります。患者様の全身
状態を把握して、麻酔薬の量を調節するのも麻酔科医の力量です。
A 肺換気の不良
肺は空気を吸入して、肺胞を介して酸素を受け取り、体内で生産した炭酸ガスを放
出します。肺での吸気の出入りを換気といいます。麻酔中は換気を維持するため、気管
内へチューブを挿入・留置します。気管内チューブは塩化ビニール製で直径が7〜8mmあ
ります。患者様によっては気管内へチューブを留置するのが難しいことがあります。チューブ
の留置に失敗すると換気ができません。また気管が収縮したり、気管内に出血すると換気
ができなくなります。その他、患者様の絶飲食が守られていない場合などに挿管時の誤嚥
(食べ物などが気管の中に入ること)により気道閉鎖や肺炎などの合併症をおこすことがあ
ります。このような事態にならないように、麻酔科では細心の注意を払っています。
以上述べた危篤な併発症の他に、様々な偶発性があります。偶発性とは麻酔が原因
ではなく、患者様の体調によって発生する病態です。例えば麻酔前後の心筋梗塞、脳動
脈瘤の破壊、肺炎、肺塞栓症などです。
全く病気を合併しない第1分類の患者様の場合、偶発性の発生頻度は1/30000と考
えられています。
麻酔、手術を行って得られる健康上の利益と、麻酔によって損なわれる健康上の損失を
秤で計って、患者様やその家族と相談の上麻酔の実行を決断いたします。この問題は真摯
微妙な問題ですので、よくよくご相談させていただきます。
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